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緊急事態宣言下の商業テナントからの賃料減額要望について

緊急事態宣言の延長が決まり、多くの商業テナント企業がさらなる休業を余儀なくされています。行政から休業要請のある企業もあれば、自主判断にて休業している企業、商業施設が休館となっているため事実上休業を余儀なくされている企業まで様々です。 多くの不動産オーナーは、そういったテナント企業から、様々な形での賃料の支払いに対する要望を受けています。弊社にも、数多くの相談が寄せられております。ここでは、現場で起こっていることと、具体的対応策について考えてみたいと思います。

テナントからの要望

➀賃料支払い猶予の要望

通常テナント企業の賃料の支払いは、前月末までが期限となっています。今回コロナによる売上が大幅に減少した2月以降、3月分以降の賃料の支払いについて猶予を求める動きが増えています。

通常賃料の未払いについては、賃貸人である不動産オーナーは敷金を賃料に充当することができます。もっとも賃料に充当した結果、預入敷金が不足した場合は、賃借人であるテナント企業は一定期間内に不足分を充当する必要があります。資金繰りに窮しているテナント企業にとっては、不足分の充当も非常に困難なため、敷金の充当は根本的な対応とは言えません。また、敷金が不足すると、万が一のケースで、テナント退去時の原状回復費を賄うことができないケースも想定されます。

➁賃料減額の要望

テナント企業としても、賃借人としての義務を果たさず、賃貸借契約上の解除要件に抵触することは避けたいと考えています。賃料の支払猶予をうけても、将来の支払いを免除されるわけではありません。そこで、賃料の一定額の免除を要望するケースが増えています。減額要望の程度は、2-3割から、場合によっては一定期間免除というケースまで様々ですが、実際に要望に応じられるケースは決して多くないのが現状です。

不動産オーナーの事情

不動産賃貸業においてかかるコストの大半は、固定費であり、賃料収入がなくても負担しなくてはならない費用が大半です。また、ほとんどの不動産オーナーは金融機関からの借り入れを行っており、金融機関に対して、事業計画を提出し、返済計画を立てています。実際には、不動産オーナーだけの判断で、テナントとの賃料に対する協議を進められるケースばかりではありません。

また、商業施設のように、建物の運営が前提とされているケースと、ビルの路面店のように独立区画として使用ができるケースでは事情が大きく異なります。

救済措置について

国道交通省による賃料支払いの猶予の要請や、テナントに対する賃料の補助やオーナーに対する賃料の補助の検討の法制化などが議論されていますが、免除した場合の会計上の処理がどうなるのかなどの実務面については、あまり報道がなされていません。

現在は、賃料を免除した場合損金として扱えることや、固定資産税・都市計画税の減免について、指針が出ています。実際には、損金として扱うための要件・手続きについては確認が必要でしょう。固定資産税・都市計画税の減免については、土地の税金は対象とならず、都心の商業地のように、高額賃料が土地の価格の影響を受けている場合や、ロードサイドで事業用定期借地の制度を使って、事業を行っているケースなどは対象外となっています。

欧米では、既に法制化も進んでいるため、そのような事例を日本にスライドさせる議論も増えていますが、日本では、借地借家法の特例措置でななく、テナントもしくは不動産オーナーに対する、賃料への充当を念頭に置いた新たな助成金制度や公的な融資拡大が検討されています。不動産に関する業界団体も国に働きかけを行っています。

こちらについては下記リンクをご参考にしてください。

賃料免除した場合の損金算入について

https://www.mlit.go.jp/common/001340572.pdf?fbclid=IwAR32zzpnr3ZDsAsiFcsG0p1K7QVQIMuSDQEtCW8B57VRnMvvC6vB3KAnHrs

固定資産税・都市計画税の減免について

https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000399.html

宅建協会による要望

https://www.zentaku.or.jp/news/4789/

賃料減免の具体的な判断について

こちらについては、賃貸人である不動産オーナーが、社会的要請は一定程度考慮しつつも、これまでのテナントとの関係性や、テナントビジネスの継続性、代替テナントの可能性などの要素を十分に考慮したうえで、現実的な経営判断の中でなされる必要があります。国による賃料減免の原資の補助が不十分な状況で、具体的な対応が取れない不動産オーナーがほとんどなのが実情です。場合によっては、競争力のあるビルに建て替える契機になるかもしれません。仮に、不動産オーナーの権利を制限するような政策が導入される場合は、中長期的に見て公平といえるのか、きちんと議論がなされるべきでしょう。一時的とはいえ、いったん権利の制限がなされると、元の状態に戻すことは容易なことではないからです。

まとめ

今後は、テナントの経営状況の把握や日常のコミュニケーション、今後の不動産市況に関する見通しをどれだけ持てているかどうかが、ビルの経営上のより重要な要素となります。自主管理している不動産オーナーはもちろん、管理運用を任されている会社も、不動産オーナーに対して、きちんと説明責任を果たし、適切なアドバイス・フォローを行う必要があります。これまでは、目先の収益性のみで不動産の運用がなされていたケースも多く、今後、不動産運用の在り方が見直される契機になるかもしれません。